意見の違いこそブレークスルーの知恵 【アスクラボメールマガジン2023年2月号】

ビジネスモデルやマネジメントには市場の変化により、そこで通用する賞味期限があると思います。当初は革新的であった技術でも、やがて他社が追随し、価格やサービスでの競争となってきます。また、全世界に猛威をふるったコロナウイルスの影響であったり、ロシアによるウクライナ侵攻など世界を取り巻く環境も刻々と変化しています。

最近では最強と思われた米IT大手でも厳しい業績の為、大幅な人員削減を行っているニュースをよく耳にします。直面する状況に対応して変化していかなければ、世界の名だたる大手でも生き残っていけません。マイクロソフトやグーグル、アマゾン・ドット・コムといったIT企業が大幅な人員削減を行ったのに対して、

世界最大の時価総額のアップルは今のところ大規模な人員削減を行っていません。前者と後者は何が違うのでしょうか。

前者はコロナ後もバーチャル空間を中心とした生活スタイルが永続するだろうという予測で、その関連部門に対する大幅な投資や20199月期から20229月期の間に従業員を1.52倍近く増員しました。一方、アップルは20%の増員にとどまり、従業員の4割は小売り担当の従業員です。ハードウェア製品とその販売に焦点を当てた無駄のない経営を行う体質が他大手ほどのダメージを避ける要因となったようです。

 

身近な話にもどりますが変化していく市場環境に対応する知恵はどこから見つけたらいいのでしょうか。日本においても今まで優良企業と評価されてきた企業が突然、経営危機に陥るというニュースを聴くことがあります。その多くの原因は営業現場の実情や製造現場の事実が経営企画・判断に活かされていない、或いは実際の情報を経営層へ上げることが困難な風土があるといった場合が多いように思います。正しい情報を知らずに、適切な判断をすることはできません。規模の大きい組織で起こりやすい課題だと言えます。

 弊社のような小規模の組織は逆に営業現場・物づくりの現場の情報を拾い上げ易く、それを経営判断に活かすことができれば強みになります。実際のところ多くの場合、現場から上がる事実の情報や意見は経営者の考えとは相違があります。それぞれの立場・役割を考慮すればごく自然なことです。家庭で子供が成長して自分の意見を持つようになることと同様に、組織においても社員が経験を積み、自分の意見を持つようになります。各々の意見が最初から一致することはありません。現状を認識しながらお互いに意見をぶつけ、一つの方向性にまとめて行く必要があります。 実際に社内で意見が違う場合、私はその異なる意見を持つスタッフが作成した資料や報告を時系列でまとめて読み返してみます。始めは、「このスタッフには意図が伝わらないな。」という印象だったのですが改めて報告等を見直すと、そのスタッフが主張している内容が私の

これまでの思考の中にはなかった考え方や知恵だということに気が付きました。相手が「意図を理解しない」のではなく、自分の方が相手の意見を理解する力が不足していたのです。「意見が違う」ところに経営者が今まで思いつかなかった知恵があると思います。

 

 日常的に弊社ではPROナビというツールを利用して、現場情報の共有とそれに対する各自の意見をチームで共有します。その情報共有の土台の上で、顔を合わせて会話をし、五感を通したコミュニケーション、意見のやり取りを行った上で最終的な判断をします。弊社では全スタッフが毎日PROナビに情報を登録しているので、情報共有の土台は出来ています。相違する意見が単なる反論であるのか、論理的な自分の考えであるのかは、PROナビ上に裏付けとなるそれまでの経緯の情報登録があるかどうかで判断しています。その土台の上で意見が異なる場合は議論し、会社の知恵として新たなビジネスモデル、商品開発、マネジメントを引き続き進化させていきたいと思います。

 

PROナビ

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              アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙