経営陣との対話から生まれたトップアプローチ研修【アスクラボメールマガジン2023年3月号】

弊社研修に経営陣との意思疎通を図るスキルを強化する「トップアプローチ研修」があります。他研修を取り揃えている大手企業でも類似のない研修メニューとして10年以上ご好評を頂き、これまで数多くの営業の方、及びSEを含む顧客への提案に携わる方、今後そのような活動が期待される方にご受講を頂いています。基本となる部分は一貫しておりますが、各演習や解説については随時アップデートをして改善を続けています。

 かつて「トップアプローチ研修」を開発するきっかけとなった今でも印象の深い面談があります。マスコミの紹介で日本を代表する大手企業X社の社長と初めてお会いしました。面談場所のホテルに行くと社長の他に秘書はじめ幹部の方が2名同席されていました。一般的な会話の後、どうしてもこの機会に直接聞いてみたいことがあったので「めったにお会いできない社長にお会いできたので、一般的な話でなく、聞きたいことを聞いてもいいですか?」と許可を頂いた上で、「弊社には御社の正式社員と、おそらく下請けの会社社員と思われる方の両方が来られますが入社後、時間の経過とともに御社の社員が頼りなく見えてきます。社長はそのことをどのように思われますか。」と尋ねてみました。社長は、「逆に君はなぜだと思う?」とすぐに聞き返されました。私は「御社のような大企業では自分の所属部署や取り扱うサービスについては知識とスキルを身に着けておられますが、自分が成果を出さなければ会社が倒産するかもしれないという危機感を持つ方はほとんどおられません。部分最適の知識とスキルに偏りがちです。それに対して下請け会社の社員は日常的に自分の成果が会社の業績、継続に反映するということを肌で感じて提案や業務を行っています。なので会社が継続、発展していく為に何が必要なのかを理解して仕事をしているように思います。」と答えました。社長はしばらく無言で何かを考えておられるようでしたが、その後、話題は変わり特に悪い雰囲気になることもなく面談は終了しました。

 その翌日、X社の幹部の方から連絡があり、社長が「アスクラボに50人ほど社員を送って鍛えてもらえ」と言い出しているがどうするかという内容でした。50人と言われるとアスクラボの全社員数より多いので無理ですが、2名程度なら可能という旨を回答しました。その結果X社より弊社へ2名の社員の方が2年間出向に来られることになりました。X社の社員の方が弊社に出社された際、「私たちは社長の指示により勉強に来ました。」と非常に緊張された様子でした。そこで私は「X社のような大企業では自分の所属する部署やチームも大きいので、企業全体というより部分的な視点での役目しか理解できないかもしれませんが、弊社のような中小企業では自分の部署・チームでの行動や結果が会社全体の業績や風土形成に直結します。個々、部署・チームでの考えや行動が会社・組織にどのような影響を及ぼすか等、会社全体の仕組みを見て・感じて、それらを経験して自分の武器にすると思えば出向のメリットがあります」と説明しました。そして2年後、出向を終えた2名に弊社で勤務したことが何か学びになったかを聞いたところ、「会社で与えられる予算数字は『やらなければならないもの』と理解していたが、2年間のアスクラボ勤務で『何のために予算が必要なのか』という本質が理解できたように思います。」と答えられました。その後、他社からも何度か同じような依頼を受けました。

 「トップアプローチ研修」は上記のような経験をもとに研修として2日間に構成しています。研修を通して以下を学んで頂けます。

・部分最適ではなく会社全体の仕組み

・企業の成績表とも言える決算書の理解、資金繰り

・経営層が興味を持つのはシステム提案ではなく業務改善の提案

今、持っている知識と経験に上記を加えて頂くことで今後の提案活動のお役に立てることと思います。

              アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙