経験を生かして共感を得る【アスクラボメールマガジン2015年9月7日号】
コミュニケーションを円滑に行うために「相手の共感を得る」ということは非常に重要です。例えば会社で配下のスタッフへ注意をするとき、共感を得ている場合と共感が得られていない場合では、相手の受け取り方も違います。
私はセミナーや講演、研修などの講師を引き受けることが多いのですが、参加者にこちらの想いを伝えるためにも、「共感」ということを意識せずにいられません。以前、ある金融機関より「人材育成」というテーマで講演を依頼されたことがありました。講演の冒頭で「人を育てることができると思うのはおこがましい」と話したのですが、質疑応答の際「人材育成の講演をする人がそのようなことを言ってよいのか?」という発言がありました。私は半分冗談も交えて、次のように回答しました。
「ここにご参加の多くの皆さんは結婚されていると思います。私も結婚しています。恋愛中は彼女に対して『僕の思うとおりの奥さんになってほしい』と思っていませんでしたか?現在はいかがですか?奥さんから『私の思うとおりの夫になれ』と、日々指導を受けていませんか?奥さん一人を自分の考えるように導けないのですから、育った環境や価値観が違う大人を、私の話だけで方向を変えることは到底できません。」会場からは多くの笑いがもれました。多くの方が身に覚えがあったのでしょう。
そして次の一言を加えました。「私の話だけで方向を変えることはできませんが、仮にできるとすれば、成長可能な『舞台』を作ることだけで、成長するかどうかはその人自身にゆだねられていると思います。」その質疑応答から、会場の皆さんとの「共感」がスタートしたと思いました。
さて、私自身を振り返ってみると、子どもの頃も社会人になってからも、怒られたり注意やアドバイスを受けたりしたことは数多くありました。しかし、同じように怒られても、納得する相手と反発する相手があり、そこは「共感」の差であると思っています。私が過去に共感・納得した相手について考えてみると、まず、こちらの言い分をいきなり否定することはありませんでした。否定するのではなく「気づかせよう」とする気持ちが感じられました。また、その相手自身の同じような経験を話してくれて、それによって、親近感を感じていました。逆に反発を感じた相手というのは、自分の考えが正しいと思い込んで一方的に押し付けてくる場合が多かったと思います。
共感を得ると相手は当事者意識と親近感を持ってこちらの話を聞いてくれます。そして「(共感を持った)あなただから話すけど・・・」と、本音を話してくれるようなります。これをビジネスに置き換えれば、相手の本音(潜在的なニーズ)を聞き出すことができるということです。競合するライバルも入手できない情報を得ることができれば、商談を有利に進めることも可能です。逆に共感を得られなければ、最悪の場合は聞く耳を持ってもらえない状態になり、商談も停滞してしまいます。
私が大手企業の管理者向け研修を行っているため、研修コンサルタントの方々が情報交換にみえられることがありますが、「管理者の研修をされていて受講者に反発されませんか?」という質問をよく受けます。反発はゼロとは言えませんがほとんどありません。その理由は、私自身が「私の考えが絶対正しい!」と思っておらず、私の考えも多くの中の一例と思っているからです。また、参加者・受講者に対して「教える」のではなく「気づき」に主眼を置き、押し付けではなく自分自身で成長することを目標としていることも反発がない理由であると思います。つまりは、「共感を得る」ことは、こちらから教えることでも押し付けることでもなく、相手が潜在的に感じていることを引き出すことなのだと思います。
自分自身が共感を得た経験が、今に活きていると思います。
PS:先月のメールマガジンのテーマは「お客様の共感を得る重要性」で、マネージャーの視点で営業活動における「共感」の重要性をあげておりました。私の「共感」の経験も、マネージャーの「共感」の経験も、PROナビ(※)で共有して社内の財産としています。
※PROナビ=弊社開発の組織営業力強化システム
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙