機長の判断【アスクラボメールマガジン2016年2月1日号】

私の高校時代からの友人Aは某航空会社のパイロット(機長)でした。現在は定年退職しましたが、その彼がまだ現役の機長の頃に、私に次のような話をしてくれたことがあります。

フライト中の飛行機に何らかの異常が生じ、機長である彼(友人A)が最初に気付いた場合にどうするか?彼は先ず、他のクルー(乗員)に知らせるべきかどうかを判断し、それから乗客に知らせるかどうかを判断するのだそうです。クルーに対しては、異常を知らせて対策に協力してもらった方が安全なのか?それとも異常を知らせることでクルーらの不安が増し安全につながらないのか?ということを判断するそうです。その次が乗客に知らせるべきかどうかの判断になるのですが、彼曰く「ここが一番難しい」のだそうです。その理由は、機長であるパイロットの彼と一般の乗客とでは、経験、知識、情報の差がありすぎて、正確に状況が伝わるかどうかということを危惧するからです。
本来、不安を解消・軽減するために状況を伝えるのですが、正確に伝わらなければ不安が増大してパニックになるなど、知らせることでかえってリスクが大きくなる恐れもあります。

乗客・乗員に不安を感じさせないようどのようにすべきか?
どのように不測の事態に備えることができる伝え方をするか?
フライト中の飛行機という閉ざされた空間で、機長には常にリーダとしての判断が求められます。

私はこの話を聞いて、ビジネスで求められる判断と似ていると感じました。私も長年ビジネスを経験してきましたが、商品開発が計画通りに進まない、売上・利益が予定通りに伸びないときは、配下のスタッフから「先が見えない」、「不安だ」という言葉を度々問いかけられてきました。友人である機長が判断するときと同じで、立場や負っている責任の違いがある中で、相手に理解してもらうために力を入れて説明をしても、経験、知識、情報の差があれば、正確に状況は理解されず、不安を増長させることになってしまいます。

さて、私は仕事において、できるだけ短い言葉で伝えるということを心がけています。長い話をすればするほど、話し手と受け手の間に誤差が生じる確率が上がるからです。また、PROナビ(※)を自ら日々活用することにより、現実の商談における対応・マネジメントを社内に伝えています。これは弊社のあるスタッフに、「社長が仕事で日頃どのような人に会い、どのような話をされているのか?いろいろな場面でどのような対応・判断をされているのか知ることができたら、早めの状況理解、早めの対応ができると思うのですが・・・」と言われて気付いたからです。

PROナビは、経験、知識、情報の差を埋めるための手段として、大変有効であると実感しています。

※PROナビ:弊社開発の組織営業力強化システム

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙