決算業務・業務知識の重要性【アスクラボメールマガジン2022年5月号】
2019年の日経新聞に「IT業界3つの時代遅れ ユーザ企業の怒り爆発寸前」というITベンダーに対する顧客の満足度調査結果に関する記事がありました。
ユーザ企業の怒りの理由は、SEのスキル不足、コスト高、ニーズに合わない提案という内容でした。
少し古いデータですが、2006年のJISA情報サービス産業白書では、エンドユーザのベンダーに対する評価において、企画提案力、業務知識、業務分析力が非常に低い結果でした。2019年と2006年で調査年代は離れていますが、市場(ユーザ)が求めているニーズは類似していると思います。
以前、日本を代表するITベンダーの役員の方から、「業種に特化したASPサービスの売上が以前より減少してきているので要因をつかんでほしい。」
という依頼を受け、弊社で調査・コンサルティングを行ったことがあります。
調査の結果、ASPサービスの機能自体は素晴らしく、物づくりの技術に関しては学ぶべきところが多々ありましたが、
・機能が現場の業務の流れに合っていないこと
・ベンダー側の業務知識が不足していること
を報告しました。
前述した内容は、いずれもITスキルは高度なテクニシャンであるものの、業務知識を持ったSEが減少していることに起因していると感じます。
弊社サービスメニューの一つに「研修」があります。
その研修を通じて大手ベンダーの受講生の方々(3,500名以上)と接して感じたことは、
・短時間での資料作成・まとめの上手さ、
・興味を持った場合の知識吸収の速さ
など、流石に優秀な方々が多くいらっしゃいます。
そして、テクノロジーや機能的な知識も豊富にお持ちです。
しかしながら、決算(会計)に関する知識および業務知識に関しては興味不足・知識不足といった感がありました。
そのため一方的に教えるのではなく、
1)まず企業の経営課題の解決には、人間系の業務改善と機能との連携、企業運営の決算(会計)に関する業務知識が必要であることをご理解頂き、その上で
2)習得した知識をどのように活用すれば企業および自身の市場価値が向上するかという観点で、実践での使い方を踏まえて興味を持っていただくこと
に重点を置いた研修内容としています。
現在「DX」という言葉が世の中に氾濫していますが、DXの成果として業務・決算数字の改善を理解しないまま最新機能を導入しても、むしろ混乱をきたすことが増えることとなり、結果として今のDXブームは時間の経過とともに縮小するのではないかと心配しています。
The Enterprisers Project の記事によると、AIの先進国であるアメリカでマッキンゼーがAI導入の効果を調査したところ、導入成功と言える企業は22%という結果でしたが、成功かどうかは、導入企業の決算数字データによる判断でした。
企業の成果とは、最終的には決算数字の改善です。
そのためにベンダー営業・技術スタッフには 「決算業務・業務知識」が重要なのです。
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙