こだわり【アスクラボメールマガジン】
■デザイナーの「こだわり」
私の友人に建物の設計を行う一級建築士がいます。以前、彼の描いた美容院や商店、アパートなど様々な建物のイメージスケッチを見せてもらったことがありました。
私はデザインやスケッチといったことが不得手なこともあり、設計・デザインのプロとは言え、様々なイメージを思いつき、デザインしてスケッチに表せる友人に感心しました。
それと同時に、どうしたらこのようなデザインを思いつけるのだろうかと、不思議にも思いました。そこで、友人にそのままを尋ねてみると、「君が街を歩いているときや旅行に行って知らない街に滞在しているとき、何か『こだわり』をもって街を見ていたり、感じたりしていないか?」と逆に尋ねられました。
街を歩いて意識して見たり、感じたりしていること・・・?
改めて考えてみると、仕事柄かもしれませんが、どのような店舗にお客さんが入っているか、あるいは食事や買い物に入った店でスタッフの対応はどうかなどを気にかけていることに気付きました。それを伝えると友人は、「僕の場合は、街を歩いても旅先でも、何か面白い建物はないか、変わった建物はないかを常に気にしていて、一種の『こだわり』をもって見ている。そして、気に入った建物があれば覚えておくようにしている」と答えました。
記憶に留められた様々な建物を、デザインする際に引っ張り出してきて、新たなデザインの参考にしているのだそうです。
その時は、何気ない日常の生活でも「こだわり」をもって見るという友人の回答に感心したことを覚えています
■「こだわり」とは目的意識
さて、私は今までに2冊の本を出させて頂きましたが、初めて「本を書いてみませんか」と依頼され、引き受けたときには少し複雑な心境になりました。
自慢ではありませんが、子どものころから国語の成績は非常に悪く、作文は正直なところ大の苦手だったからです。そのため、執筆を引き受けたはいいが、最後まで書き上げることができるかどうか非常に不安だったのです。案の定、机についても文章が出てこないまま時間ばかりが経過し、約束した締切が刻々と迫ってくる・・といった事態に陥りました。そんな時、先の友人が言ったことを思い出しました。
そこで私は、日常のあらゆる場面で、本のテーマに関することに「こだわり」をもって見たり、感じたりすることを実行してみたのです。
テレビを見るとき、新聞・雑誌を読むとき、街を歩くとき、ビジネスの打ち合わせを行っているとき、様々な場面で「執筆に関連するヒントはないか」と気にしてみると、それまでは気に留めていなかったことにも気付き、ヒントとして使えそうなものを記憶するようになりました。それまでは停滞していた私の頭の中の文章の引き出しも、こだわりをもち、記憶することによってヒントを得て、それを基に文章を考えることができ、最後まで書き上げることができました。
もちろん、完成までにはたくさんの方々の手助けも頂きましたが、「こだわり」をもつことが最後まで書き上げることができた大きな要因の一つだったと思います。
この「こだわり」ですが、私は「こだわる」ということは目的意識だと思っています。
■新しい戦略を見出すための「こだわり」
アスクラボでは、管理者、営業担当者、技術者など、全社員が「PROナビ」へ日報を登録し情報を共有しています。その日報を日々「こだわり」(=目的意識)をもって見ていると、実績数字による管理だけでは見つけることができない(数字には表れない)様々なヒントが隠れています。
・自社が提供する商品やサービスを、お客様はどのように評価しているか?
・スタッフのモチベーションやスキルは向上しているか?(あるいは停滞していないか?)
・担当者間や部署間の連携がスムーズか?
・お客様から不満の声が上がっていないか?
・トラブルの芽はないか? 等々
「こだわり」をもって見てみると、今まで見過ごしていたことに気付かされます。
さらには、スタッフの現象のとらえ方の変化や感じ方の変化、お客様に対する行動や対応の変化など、時系列的な成長の軌跡も見えてきます。目先の受注数字のみにこだわっていると、きっとそれらを見落としてしまいます。
しかし、自社の強みや弱みを見極め、将来の企業戦略立案に役立てるという「こだわり」をもって見れば、日報は大きなヒントが多く埋まっている「宝の山」なのです。日報という日々あげられる情報をこだわって見ることで、このヒントが見えてきたのです。
斬新なアイデアや、新しい考えは、一朝一夕に出てくるものではありません。
目的意識を強くもつことによって「こだわり」が生まれ、日常の「こだわり」の積み重ねがアイデアや考えの基となるのだと思います。
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙