言う事なかれ人の短【アスクラボメールマガジン】
以前、私が師と仰ぐ地元のご住職に「言う事なかれ人の短」という言葉を教えてもらいました。
この言葉は、私の経営や営業における考え方の基礎の一つになっています。
設立した当時の弊社は、当然ながら既存顧客は皆無でしたので、会社を存続させるためには新規にお客様を開拓するしかなく、私も毎日必死で営業活動をしていました。
しかし、設立して数年が経過し徐々にスタッフが増えはじめると、自身の営業活動以外にも目を配らなければならなくなり、加えて、当然のことながら人員の増加は経費の増加となり、「会社を存続させるため」という経営的な視点での行動を気にかけるようにもなりました。
その結果、成果の上がらない幹部やスタッフに対して「なぜ行動できないのか?」、「なぜ実績が上がらないのか?」など、欠点を見つけては「あるべき論」の指摘ばかりをするようになっていました。そんな私と同様に、他の幹部も配下スタッフの欠点を見つけて指摘をするといった管理を繰り返していました。
気が付くと、私とスタッフ、幹部とスタッフ、私と幹部のそれぞれの間には、すきま風が吹くような事態になっていました。
そんな時、私が師と仰ぐご住職より、「言う事なかれ人の短」という言葉を教えてもらったのです。「自分自身はできているつもりで人の欠点ばかりを見つけていては、会社が発展するわけがない」と説教をされたのです。
残念ながらその時の私には、ご住職の言葉の真意を理解できませんでした。
ただ、教えていただいたその言葉自体が強く私の頭に残り、一生懸命にその真意を考えました。
そんな折、あるスタッフが元気のない様子だったので、声をかけてその理由を聞き、私なりのアドバイスをしました。そのスタッフは、素直に「はい」とうなずいていましたが、なんだか私がアドバイスをすればするほど、より元気がなくなっていくように感じました。
それから数日後のことです。
IT企業の代表を務めているとは言え、元来、コンピュータに関しては技術的にもシステム的にも苦手な私が、パソコンの操作を誤ってどのようにリカバリーすればよいかがわからなくなってしまいました。そんな時、先ほどのスタッフに「パソコンの操作ミスで困っている。どのようにリカバリーすればよいか教えてほしい。」と助けを求めました。
すると、そのスタッフはすぐに、そして気持ちよく対応してくれました。対応してくれている時の表情をみてみるとよい表情をしていて、私がアドバイスした時に比べて同じスタッフとは思えない感じでした。
なぜ、スタッフの表情がこうも違うのか?
私なりに考えたスタッフの視点での結論は次の通りです。
・パソコンの知識は社長より自分のほうが上
・自分の知識が社長の役にたっている
欠点を見つけて指摘するよりも、よいところを見つけたほうが元気も出てモチベーションもアップするということに気付いたのと同時に、ご住職に教えてもらった言葉の意味を真に理解できた気がしました。
ビジネスにおいては、部下であるスタッフの欠点が目に付くからといって、簡単に辞めさせるわけにはいきません。また、上司のことが気に入らないからといって、スタッフが簡単に上司を変えることはまず不可能です。お互いに欠点を見つけるよりお互いの長所を見つけたほうが、経営的な視点からみても効率的であり、それが現在のアスクラボの経営方針の基礎となっているのです。
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙