「慣れ」のリスク【アスクラボメールマガジン】

車の免許を取ったばかりの初心者は、運転に慣れていないこと、低速でも速く感じること、スピード慣れしていないため恐怖心があることなどから慎重に運転します。そのため、比較的事故が少なく、万が一事故を起こしてもスピードを出していないため大きな事故にならずに済みます。しかし、運転に慣れてくると「運転が上手くなった」という過信が生じ、慎重さに欠け、スピードも出すようになります。その結果、大きな事故につながるリスクが増してきます。この「慣れ」によるリスクは、車の運転に限ったことではありません。

営業的「慣れ」のリスク

弊社は30年程前に、パソコンショップからIT関係のビジネスをスタートしました。ショップがオープンした当時の私は、金額の大小にとらわれずお客様に真剣に向き合い、質問などにも丁寧に対応していました。その後、オフコン(オフィスコンピュータ)、汎用機へと扱う商品が広がると、商談の金額・規模が大きくなり、数千万円という商談が当たり前になり、自分自身がその金額に慣れてしまいました。その結果、パソコン単体で数十万円といった商談を対応する際、お客様に対して「早く、スピーディに決めてくれないかな・・・」、「決めるまでに時間がかかり過ぎているな・・・」などと感じるようになり、営業活動におけるお客様に対する気持ちから「手抜き」が始まっていました。お客様は敏感です。私と他の若手営業スタッフとの対応を比較し、私の態度に「手抜き」を感じとられていました。その時、今の私の対応は営業としては失格だろうと気づきました。大きな商談に慣れてしまったためのリスクです。そして、いくら営業経験を積んでも、どんなにスキルが上でも、手を抜いた営業活動を行うのであれば、結果として、経験やスキルは未熟でも誠意ある営業活動を行う若手営業スタッフの方がお客様から交換を持たれて頼りにされると気づき、現場スタッフに任せた方がよいと気づかされるきっかけにもなりました。

システム構築における「慣れ」のリスク

システム構築において過去に生じた大きなトラブルを振り返ってみると、ベテランの技術者がメインで担当している案件で発生することが大半でした。ITのみでなく、大きな事故やトラブルの原因は、初期対応の遅れもしくは初期対応のミスというデータがあります。ベテランは、良くも悪くもトラブルを経験してきているため、隠ぺいなどの悪い意味ではなく自分の力で解決しようとがんばります。ある意味でトラブルに慣れているからです。その結果、会社としての初期対応が遅れて大きなトラブルに発展してしまいます。これも「慣れ」によるリスクです。システム構築にあたっては、管理者も含めて会議を何度も行ってチェックをするのですが、なかなかトラブルがなくなりません。
そこで弊社では、トラブルに慣れていない若手技術スタッフをプロジェクトのメンバーに入れることを実践しました。トラブルに慣れていないために生じる恐怖心を利用して、トラブルの初期対応の遅れを防ぎかなりの効果を出しています。

追記
トラブルに慣れていない若手スタッフですが、face to faceの会議で上司やベテラン社員を前にして、「怖いです・危ないです」とは、なかなか言い出しにくいものです。
弊社開発の組織営業力強化システム「PROナビ」は、ITというツールを使って「怖い・危ない」を共有情報として発信できる仕組みです。また、さまざまな営業プロセスにおける「慣れ」によるリスクの回避にも役立ちます。

                             アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙