意図が理解できないと動けない【アスクラボメールマガジン2016年9月5日号】
「配下のスタッフに指示を出しても思うように動いてくれない・・・」組織において部下をお持ちの方なら誰でも経験があることではないでしょうか。配下のスタッフが指示通りに動いてくれない理由の7割が「スタッフ自身が指示を理解できていないため」と言われています(ちなみに3割は「反抗」だそうです)。
仕事上多くの経営者の方々にお会いしますが、話の中で「うちには人材がいないから」と言われることがあります。しかし、話をうかがってみると、自分の意図がスタッフに通じない・スタッフが理解していないということを言われているのであって、「人材不足」ということとは違うのではないかと感じます。では、スタッフに意図が通じるように・理解させるようにどのようなことをされているのかを経営者の方々に尋ねると、一様に「会議で常に言っている」、「朝礼で説明している」と答えられます。
大手企業の部門長(約100名)を対象とした研修を行ったことがあります。一度に全員の研修はできませんので数グループに分けて実施したのですが、半数の方が研修を終えた頃、研修の中間報告を依頼されました。経営者層が一堂に会する役員会に出席して研修の報告を行ったのですが、「企業トップの意向が部門長に通じていない」という私の報告内容に「会議などで常に私の考えや方針を述べているから『意図が通じていない』なんてことはありえない」と社長が怒ってしまわれました。
会議や朝礼では一方通行の指示・命令となってしまうことが大半です。一方通行の指示・命令では、意図が通じているかどうか、理解しているかどうかを確認することは困難です。意図が通じない・理解してくれないということは、私自身もたびたび経験して悩みましたが、対応への突破口となったのはあるスタッフの提案でした。
私たちは社長の方針に協力したいし、社長の要望にスピーディーに対応したい。そのためには、社長・経営者層の方々が、日常の業務でどのような人に会い、どのような対応をし、どのような考えを持っているのかを、オープンにできる範囲で知らせていただけたらより早い理解と対応ができると思うのですが・・・
それ以来、私は弊社のPROナビ(組織営業力強化システム)に、スケジュールや面会・訪問予定、行動や対応の情報などを毎日登録しています。これは、自身のスケジュール管理や行動のエビデンスとしてだけはなく、スタッフに指示や協力要請をする前提で、事前に私の考えていることやそのための行動を知らせておき、なぜこのような方針や指示が出るのかをスタッフの中で理解しやすくすることを主な目的としています。
情報の登録をはじめて約10年が経過します。スタッフ全員とは言いませんが、幹部層への効果は大きく、ほとんど私の意図を理解した行動をしてくれています。
スタッフは指示通りに「動かない」のではなく、意図が理解できずに「動けない」のです。弊社のような小さな組織であれば経営者の、大きな組織であれば部門長クラスのスケジュールや行動、考えという「情報」をオープンにすることで、スタッフの動きや考え方、判断が変わってくると思います。
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙