がんと免疫とビジネス【アスクラボメールマガジン2018年3月】
私は以前、人間の免疫とがんの関係・治療法について研究を行う会社を設立し、その会社の代表を現職との兼任で約10年間勤めていたことがあります。その時、人間の健康とがんに対する免疫の関係をいろいろと学びましたが、その関係がビジネス社会にも似通っていると感じていました。
ご存知のように、人間が持っている免疫の仕組みは、外部から入ってくるウイルス・細菌などの異物に免疫機能が素早く反応して排除するというものですが、がん細胞の場合は免疫機能が素早く反応しないところに問題があります。その理由は、がん細胞が自分の体内で作られたものであり、また正常な細胞と似ているため、外部から入ってきたウイルスや細菌のように異物と識別することが難しいからです。その結果、がん細胞をなかなか排除することができず、がん細胞が増えてしまい治癒が困難となるのです。がんに対しては様々な治療法がありますが、現状では手術でがん細胞を取り除き、抗がん剤で再発を防ぐというのが一般的かと思います。しかし、抗がん剤はがん細胞のみを攻撃するのではなく正常な細胞も攻撃してしまうため、いろいろな副作用が発生します。
さて、ビジネスの社会ではどうでしょうか。営業活動にあたって、競合する他社などの「外部の敵」は識別が容易なため、攻撃や防御のための準備・対応はできます。しかし、自社内で生じている問題・課題に対しての準備・対応は、体内で生じたがんと同様に識別が容易でないところに問題があります。外部から見れば明らかに不自然で違和感があることも、長年同じ仕事環境の中にいる社内スタッフにとっては、不自然も違和感も覚えることがなく、問題や課題があってもそれが「問題」であり「課題」であると認識することが難しくなっているの です。
受け継いできた環境・風土を、何の異も無くそのまま継続してよいものなのか?現在の環境・風土を改善・改革しなければ将来に大きな影響を及ぼすのでは?等々、疑問に思うことがなければ問題・課題として識別することは困難です。つまり、自社内部の問題・課題は、「外部の敵」のように識別が容易ではなく、本来の免疫機能のような仕組みが作動せず、結果として何も対応ができないまま問題が広がり、企業存続にかかわるような事態を招くことにもなるのです。また、問題が露見した場合には、当事者・関係者に責任をとらせて排除し、問題の再発を防ぐため社内ルールが厳格化され、多くのスタッフには厳しいルールが課せられます。つまり、正常な細胞までもが攻撃される「抗がん剤的」な対応になるのです。そのような環境・風土では、新たな意見やアイデアなどが生まれにくく、結果として企業競争力を弱めてしまうのではないでしょうか。
がんは人間の老化現象の一つでもありますが、企業も営業年数を重ねると、老化現象として課題の認識力・改善や改良力が弱くなっているのだと思います。
※自社開発の「PROナビ」は、企業内の課題・問題を早期に把握し改善するために、簡単かつ少ない機能で、また低価格で組織の情報共有を可能にする仕組みです。情報共有により企業の老化現象を防ぎ、その結果、企業競争力の向上を目的とした組織営業力強化のためのシステムです。
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙